銀座『鮨虎』握り鮨×日本酒だけで判断するなら?

こちらのお店は15,000円/人程で15カンと立地を考えればとてもリーズナブルに江戸前鮨がカウンターで頂ける、ギラギラキラキラ系雑誌『東京カレンダー』で擦りに擦られている握り鮨だけを提供するお店です。

雰囲気は東京カレンダーじゃないんですが、きっと編集者達がこちらのお店好きなんでしょうねー。

カメラマンも撮り方上手です(笑)。

握り鮨が3万円/人〜5万円/人と高級になったのは2000年代から。

それまでは2万円/人出せばどのお店でも行けました。余談ですが、今200万円/本〜300万円/本するロマネコンティはこの当時8-15万円/本でした。

おつまみをお酒と楽しんでからの〆の握り鮨の流れも近年です。そこには接待などでゆったり愉しみたいというニーズや原材料や人件費の高騰があったからというのはもちろんですが、そもそも握り鮨と日本酒は味的にもスピード的にもあんまり合わないでしょ?という考えがベースにありました。

そんな風潮へのアンチテーゼを静かに唱えているのが銀座『次郎』とこちらのお店(だと思います)。

つまみを出さずに経営を成り立たせてしっかり来店者を満足させるというのは実践できれば回転率も上がるのですが、言うは易し行うは難しで、そういうお鮨屋がほとんどないことからも、とてつもなく困難なことが判ります。

本来の意味では「銀座」とは呼ばないエリアの銀座雑居ビルの一角にあるお店。

以前はこのフロアに世界一美味しいと云われるハイボールを出すお店がありましたよね。私はここと東銀座『So what』のハイボールが大好きでしたが、今は両店共ありません、、、(泣)。

さて、このお店の評価は結構難しいと思います。

なぜかといいますと、こちらのお店のフルコース×お勧めの日本酒の計3万円/人程の体験をしないと困難だと思うからです。

普通の握りのコースではあっさり終わってしまうからです。

御主人は本当に美味しい食べ物とはをしっかり理解していて、食べ歩いていて、勉強して、それを体現できる超一級センスのある商売上手な御方。

店内は繁華街の雑居ビルあるあるの鰻の寝床のような小スペースで逆L字型カウンターのみ。カウンター奥には御主人だけが立てるスペースあり、その壁一枚奥にはお弟子さんが1人立てるスペースという構造で、使われている材質やカウンター含めた内装は正直褒められたもんじゃないです。

東京カレンダーの編集者の方々が個人的な猛烈ファンだからか、東京カレンダーに掲載されるお店の内装ではありません。

ただ、提供される握り鮨×日本酒のマリアージュは都内屈指の極上レベルなんですよね。

最初こちらの握り鮨だけを頂くじゃないですか?そこで感じる第一印象は強力な鮨ネタに対して酢飯(シャリ)が大人しく弱いということ。

そこで御主人にお任せした純米酒系の日本酒をお任せで頂くと見事に口の中でマリアージュがおきて素晴らしいレベルで完成するんです。

つまり、こちらのお店では日本酒飲むことありきで酢飯(しゃり)の強弱もは最初から計算済みということですね。

通常コース12,000円/人にはいわゆるウニやマグロといった花形の鮨ネタは入っていませんが、それでも旬の青魚や貝などの食材を使って充分満足できる構成となっているのですが、そこから先があるんです。

熟成させた鯖などももう丁寧に包まれたラップから捲り出した瞬間にとてつもないオーラを放っていて、頂くと見事に極限まで分解された青魚系アミノ酸を堪能できます。

特にその熟成で素晴らしいなと思ったのが、今はエイジングシートなどがあってより身近になったとはいえ、白カビ(ペニシリウム・カンディダムetc)あたりで熟成させたと思われる鯖の熟成鮨がしっかり熟成しているにも関わらず微塵もカビの匂いがしなかったこと。

それを質問すると『そうなんです、カビの匂い=熟成香と思い込んでる料理人多いんですが、熟成とカビの匂いはまた別なんですよねー♬』とサラッと回答。

あん肝のお鮨なんて私は大好きですが、上品に作り上げるのはとても難しいので、鮮度は良くても出来上がったお味は数段落ちるレベルをせいぜい居酒屋でしか食べれないのですが(生臭みを消すには肝表面の血管総て取り除かないといけないので)、四谷や紀尾井町『三谷』レベルに仕立て上げられており、その際に一緒に提供された甘め濃厚な日本酒とぴったりでした。

大トロ提供後にミョウバン未使用の生ウニを提供して生ウニで大トロのマグロの余韻をばっさり切って消すという流れも面白い体験でした。そんな創意工夫が至る所に散りばめられているのがこちらのお店です。

私は貝の少しでも鮮度が落ちたときに発生する臭いにとても敏感なので、有名鮨屋でも避けることが多いのですが、こちらの貝は総て美味しくて頂けました。

最後の玉子焼きもそれまでに多用した貝系の掃除した部位を使った出汁で品良くねっとり低温調理で上手です。

これはどのお店にもいえることですが、本当に良いお店なら料理からお酒まで任せたほうが良いことが圧倒的に多いんですよね。価格が気になるなら最初にさらっと予算上限を伝えておけば良いお店は良い良心も兼ね備えているのでしっかりその範囲内で最大限に対応してくれるものです。

このレベルや食後感はなんだったかな?と思い、ふと、フレンチで私が普段利用させてもらっている田原町『カナイユ』を思い出しました。

その日によって異なりますが、30カン前後その日の鮨ネタ全部堪能して食べてお勧め日本酒沢山飲んで3万円/人程ですが、口の中の満足度的には5-6万円/人の価値あり。

ただ、お店判断のレベルを雰囲気重視の方や日本酒飲めない方や周囲の意見で揺れてしまう方々がにはこちらのお鮨屋の凄さは到底理解できないと思うのでお勧めしません。

ここのお店を評価しなかった現在絶賛自粛中の某グルメ芸能人はやっぱり味覚大したことないんだよなーと再確認。

そもそも、素人玄人関係なく、自分で好きで色々料理をしない人がプロの作り手のそれまで膨大に費やした時間から生まれる素晴らしさを理解することなど不可能なんですよね。

まさに御主人の握り鮨×日本酒のマリアージュと御主人の軽快かつ時々さらっと奥深いトークの組合せは見事です。

この握り鮨を好きな方は他のお店を割高で気取っていて嫌だと敬遠することが多いので、両方を冷静に比較できる食べ手はまず皆無。そのあたりに私のレビューの存在価値があるようです。

味とお酒だけで判断するなら4.6-4.7ptというレベル。
そこを内装などが3.3ptで相殺して総合的には4.0ptという感じです。

江戸っ子は粋じゃなくてはいけない、銀座の鮨屋は粋じゃなくてはいけないと昔からいわれますが、少なくともその粋さを感じ取れる受取り側の感性も必要なわけで、自分が選んだ日本酒と自分が握った握り鮨だけで来店者達を愉しませて満足させたいという姿勢とそれを実践している実力は紛れもなく「粋」ではないでしょうか?

ということで、こちらのお鮨屋はお一人様はもちろんのこと、純粋に日本酒とお鮨が好きな知人友人と2人もしくは5-7人で貸し切って気兼ねなくワイワイやるのが最高だと思います。

とにかく日本酒と一緒にしっかりお腹空かせてその日の最高を堪能しましょう(^^)