新橋『冨所』/危険なCP/ 旨味濃厚
新橋〜銀座界隈で、リーズナブルに美味しい握り鮨を頂きたいというグルメン達にとって必須のお店というのがありますよね。
個人的には以下のお店をリーズナブル江戸前鮨四天王として位置付けてます。
・新橋『しみづ』
・銀座『小笹寿し』
・新橋『鶴八(旧鶴八分店)』
・御成門『冨所』
※ 他にもこのエリアであれば聡明グルメンな皆様ご教示ください。
まー、新橋『冨所』は帆立なども出すので赤酢は使われてますが、そこまで江戸前鮨というジャンルにはこだわってないと思われます。
最近美術鑑賞/音楽鑑賞/食べ歩きを始めた方が無意識のうちにやりがちなことの一つに、自分の好みを聞かれてもいないのに真っ先に自分の好みを口にしてしまうことというのがあります。
「私が1番好きな画家は、、、」
「私が1番好きな曲は、、、」
みたいな?
でも、ある一定年数以上色々な経験を重ねてきた方々はあまりそういうことはいいません。
なぜ?
そのときの自分の感情や体調/年齢などでどんどん感じ方が変わることを知っているからです。
美味しいお店もそうです。
だからこそ、どういう心境やシチュエーションに合うかまで、聡明グルメンなフォロワーの皆様にちゃんとご提案できたらなと思います。
さて、新橋『冨所』。
もう内装からしていいですよね。
造られてから200年前後は経過している頑健な水屋箪笥を軸に壁は緑がかった褐色/鶯色でカウンターは木曽檜1枚板に天童木工の椅子6客で店内を設計。
シックな和モダンとセンスが良いです。唯一の設計ミスは奥行きのある膝足元に鞄かけや小物を置くスペースなどがないこと。それ以外の居心地はとても良いです。
まー、握り寿司もちゃんとしてますよね。
程よい芯と輪郭のある米粒に端正な赤酢ペースの酢飯。
店内の内装としっかりリンクしてます。
そして、それぞれのネタに適切な仕事のしてある鮨ネタとのバランスが見事です。
こちらの御主人は最後にもう一度鮨ネタの美味しさが舌の上にしっかり残ることを好みとされているので、大きいネタや大きい酢飯が好みのコスパ/お得感を重視される20-30代の方には特に大人気のお店です。
まー、あれです。
これだけの握り鮨をこの雰囲気で昼6,000円/人〜、夜18,000円/人で頂けるのですから、感謝しかありません。
もう少し高ければ色々申し上げれるのですが、ここまでして頂いてあーだこーだいいたくない。
そこまで私は野暮ではない。
でもそうじゃないとレビューにならないので、うん、野暮承知でサラッと申し上げます(>_<)!!! 〈墨烏賊/スミイカ〉 今日の最初の墨烏賊/スミイカ。 いつも端のほうにわずかに薄皮が残っているようにも思いますが、隠し包丁が施されているので、「プツッ」という極上の音が口の中でなるやいなや、その直後にねっとり上品なスミイカの旨味が口の中に広がっていきます。 最前列で座っている自分の眼前の舞台上で白いレースで施されたドンチョウが眼の前で上がっていく感じ。 〈春子/カスゴ〉 いやー、ここのカスゴはいつも安定で必ず頂く一品です。 鮨ネタの大きさと厚みにこちらのお店の酢飯がよく合っていて、強烈な旨味に興味の薄い私の中では密かにこちらのお店のトップレベルでお気に入りです。そうなんだよなー、上手に塩振りしたカスゴって赤貝同様にうっすらグルタミン酸の風味がするんですよねー。少し温度低めの中はまったりあっさり真鯛の相似形の旨味が舌の温度で人肌の端正な酢飯(シャリ) 〈サヨリ〉 うん、この時期ならではの大型サヨリ/カンヌキ美味しいですねー。 〈平目のエンガワ〉 げぇ、、、なんだこの巨大なエンガワは、、、。 オヒョウみたいなエンガワは今日の超当たり。 スゴいサイズでお味も繊細さこそありませんが濃厚な旨味にknock out! 〈ホウボウ〉 頭デカくて身体小さいヒレだけ異常に鮮やかなホウボウです。 それをこんなに大きな身で、、、噛み締める白身の旨さ、うん、ホウボウは熟成で柔らかくしなくてもこれで十分堪能できます。 〈マス(ます)〉 あらー、綺麗な鱒の身です。 って、なんだこの柔らかさは∑(゚Д゚)!? 味もキレイだなー、うん、やっぱり鱒と鮭は違うなー。 そういえば確か鱒って白身魚なんですよね。でもなんでこんなにやたらと柔らかいのかな? 熟成?と思い尋ねたところ、日本海側のトロール船に引っかかった鱒/マスらしいです。川に上がってくる前の、まだ疲弊せず海の底にいる鱒/マス。旬の鰯などをたっぷり食べているとのこと。身が柔らかすぎて捌いたり握ったりするのが大変らしいです。 これ、すげー、、、。 〈鮪の赤身〉 今回はヅケで。 旨味しっかり濃厚で、極上マグロ特有の鮮烈な美味しさではありませんが、味わいとしてはしっかり口の中で成立していて上々、美味しいです。 〈鮪のハガシ(鮪の普段棄てられる部位)〉 皆様ご存じ、はがしとはマグロの背中の部位の筋を取り除いたもの。本まぐろの脳天から背の部位で筋が強いところを柵にしないで、そのトロ独特の強くて厚いスジをはがし取り、そのスジとスジの間の身が「はがし」です。口に入れた瞬間に「プリッ、フワッ!」と舌の上で散ったと同時に濃厚な鮪の赤身と中トロが入り混じったような、個人的には特に本マグロの中トロ+大トロ+脳天あたりの旨味がぐわーっと押し寄せて、サッと消えていくという、、、ぎゃー、鮪にもはや飽きている私としてはこれで充分、素晴らしい。 〈中トロ〉 このような価格帯で極上マグロが出てくるはずはないのは当然なのですが、熟成させたりヅケにされたりして旨味を補完して、いつもしっかり旨味ある及第点の一品に仕上げているのは流石です。 〈帆立/ホタテ〉 乱切りにしたホタテの貝柱を小柱のように握ってその上から穴子のツメをひと塗りした握り。普通はツメの濃厚さに負けてしまうのですが、しっかり美味しいホタテが詰まっているので、口の中では最初は勝っていたツメの旨味がどんどん薄くなって最後にはうっすら甘い醤油ベースのタレとホタテの旨味が口に残り、ちゃんと成立しています。つまりそれだけホタテが詰まっているということ(笑) 〈しめ鯖〉 うわー、銀座『鮨虎やまだ』のしめ鯖みたい。 濃厚で脂の乗った鯖の旨味爆発。 しかもこの食べ応えのある握りでより一層満足度の高い一品に。現代的で若い人が特に大好きであろう一品でいつも安定しています。 〈小肌/コハダ〉 うん、バランス良くピュアなコハダの良さを及第点に堪能できて美味しいです。 〈甘鯛〉 甘鯛の刺身や握りを私は今年の冬は堪能してるなー。 ねっとり適度に熟成されていて、白身と赤身の良いとこ取りをしたような端正で綺麗な一品、美味しいです。 〈車海老〉 この価格帯で頂けるのですから赤い部分と白い部分の境目がーとか下世話なこと申し上げたくないです。必要にして十分、及第点の美味しさです。 〈雲丹/ウニ〉 私はランチコースに雲丹無くてもいいんですけどね、いつも雲丹を頂けるので恐縮です。特に不作の昨年から今年にかけてこの価格帯でこの及第点レベルの雲丹を頂けるのは感謝しかありません。 〈鰤/ブリ〉 いやー、熟成もお見事。 しめ鯖同様強烈な鰤/ブリの脂肪分の旨味が口の中で鮨ネタと一緒に爆発します。 〈海苔巻き〉 お味はいいんですけど、海苔が分厚くて固いですねー。 良い海苔は本当に高いのでしょうがないです。 〈玉/ギョク/卵焼き〉 両面の火通りが不均一なのは意図したものではないのでしょうが、それがこの雰囲気この価格帯で頂くと返って新鮮で美味しく感じるのが面白いです。 とこんな感じです。 いつも必ず煮蛤/ニハマグリだけ何故か数段ガクッと落ちるのが富所の七不思議の1つ。そのためこのお店では私は貝類を怖くて注文できません、、、。低温調理で半生のような食感を残してそこに蛤/ハマグリの旨味をしっかりに含めて、ツメをサッとひと塗りして出す。新橋『冨所』の親方が理想としているこの煮蛤の究極は銀座『かねさか本店』だと思うんですけどね。あとはこの煮蛤をどうするか?のみが課題というところ。これは調理法ではなく、蛤自体に問題があるんじゃないかなー?毎回同じ結果で食べれず、もう頼まないと思うのに他が良いのであまりに不思議で時々追加してしまう私です、、、、(/ _ ; ) それにしても危険なお店です。 鮨ネタも大きく、酢飯(シャリ)もしっかりでバランス良く食べ応えあり、雰囲気もちゃんとしていて旨味も濃厚でリーズナブル。 始終親方に、 『握り鮨って、やっぱり皆さん色々仰いますが、口の中一杯に頬張って濃厚な旨味で美味しくてなんぼでしょう?』 と耳元で囁かれている感覚に陥ります。 あ、そういえば銀座『鮨虎やまだ』や築地『佳太』に最近いってないなー。 ワインでいえば、10年以上熟成させた南アやチリの1本1.5-2万円近くする極上赤ワインのような位置付け。 ずっとそんなワインを平時から飲んでいたら、こんな握り鮨をこの価格帯で頂いていたら、特に20代でこんな握り鮨を味わっていたら、そんな方々はもう他のお鮨屋にいけなくなってしまうことでしょう。 圧倒的なお得感&旨味と引き換えに、繊細なグラデーションの美味しさを学ぶ機会を逸してしまうような、そういう危険性のあるお店です。 あ、大半の方々はそれでいいのか汗 修行先の西麻布『真』の価格帯以下でありたいと『真』の親方への敬意を含めてそう設定しているのでしょうが、それくらい価格帯を含めた満足度が素晴らしいです。 純粋な江戸前鮨を堪能したいというときに頂く鮨ではなく、単純に美味しい握り鮨をリーズナブルに頂きたいときにはこちらのお店1択でしょう。 5-6カンおかわりしても12,000-13,000円/人程。 はっきりいって、値付け間違えているのでは?くらいにお得過ぎます。 ランチは空いてるときにとにかく伺うスタンスで、あとは夜に。ご主人がペラペラ喋るタイプではないので、接待/デートなど少人数であればオールラウンドに使えます。 コロナが終わったら数ヶ月単位で予約困難なお店になるので今のうちにGo! ※煮蛤だけは超絶NGです(私は貝類未オーダーです)。 ※ランチからお酒と共にお任せにするのも良いです。 ※鮨ネタは日々変わります。私がレビューした鮨ネタは3-4回伺って印象的なモノをまとめたものです。