新橋『しみづ』/隠れミシュラン三つ星/「粋」という調味料/プリューレ・ロック
私が色々な鮨レビューで必ず触れる新橋『しみづ』です。
斜向かいに小洒落たダイニングバー『しみず』がありますが、資本系は節操なく怖いですね。
こちらは全く関係ありません!
さて、新橋『しみづ』。
今の店舗に近距離移転して12-13年程経過します。
皆さんは「江戸前鮨」の定義をなんとされてますか?
「歴史あるお鮨屋?」
「赤酢を使った酢飯?」
「羽田沖で取れた魚だけを使うお店?」
成る程、うん×2、残念、半分正解半分不正解です。
Wordからでしたらそれで正解なんでしょうけどね、それだけじゃーないんです。
本物の江戸前鮨って、
本物の江戸前鮨
= 江戸前ネタ×江戸前の「仕事」 ×粋(いき)
なんですね。
この最初の2つは今の美味しい鮨屋はどこも大なり小なりやってらっしゃいます。
じゃー、その粋(いき)はどうやって感じますか?
親方の威勢の良い掛け声?
勢いのある握り?
時々オマケしてくれるから?
「てやんでいっ!」っていえばいいの?
違うでしょー、「粋(いき)」っていうのは親方の「生き様/Style」でしょー。
そしてそれは周囲が感じるものでしょー。
新橋『しみづ』の清水 邦浩氏は元は石丸久尊氏のお弟子として『新橋鶴八』で修業されたのち、1999年に新橋に「鮨処しみず」として開業。現在は同じ烏森エリアで場所を移して新橋『しみづ』として、3-4店舗目で今のお店で13年目です。
新橋『鶴八』もニュー新橋ビルで大人気です。
本物の江戸前鮨は、そして新橋『しみづ』は男性ファンが多いです。硬派で多くを語らない物事を本質的に捉える味覚嗅覚の鋭敏で知的な、そんな男性が多いです(私のように例外います)。
だからといって清水の御主人は女性を差別してるわけではありません。清水の御主人は14-15年前から女性の鮨職人を弟子としてとられてました。そんな彼女も現在は独立され、銀座『鮨竹』の女性女将として頑張ってらっしゃいます。
ランチは13,000円/人前後で、普通はそれでお腹いっぱい。
5-6カンお代わりしてお酒飲んで20,000-23,000円/人。
私はここ新橋『しみづ』の偉大さを理解できない自称「江戸前鮨好き」の味覚/嗅覚は一才信用しませんね。
友達にもなりたくない、知り合いにいるのも嫌。
絶対信用しない。
鮪(マグロ)に頼らず、捨て皿はほとんど無し。
そりゃそうだ、令和4年になろうとしている今、最高級本鮪(マグロ)に頼っているお店もそれに釣られる来店者もどーなのさ?
本物のグルメンはもう柚子/松茸/黒トリュフ/マグロ/ステーキあたりはいつも食べてて飽きてるでしょ?
パッと先程の余韻を思い返して頭に浮かぶのは、ヒラメ/縞鯵/カスゴ/赤貝/海老/穴子といった鮨ネタ単体の異様な美味さ。
そしてそれらを増幅させる美しい赤酢の酢飯(シャリ)。
砂糖を使わないからでしょうか、美しく綺麗で、異様に余韻の長いんですよね。。。
中には並かちょっと良い程度の鮨ネタも混じってます。
でもそれを口に放り込んだ中盤から終盤にかけて酢飯(しゃり)が綺麗に支えてまとめ上げてくるんですよねー。
舌の上に最初に触れるしっかり仕事された鮨ネタ→酢飯(シャリ)→両方
の3段階の味変を伴って、頂く度に眼を瞑って唸らざるをえないわけです。
銀座『さわ田』などの他のミシュラン店で時々ある、口の中の酢飯(シャリ)の違和感が一切ありません。
なぜ口に残る握り鮨の旨味が、最後の最後で加速して増幅するのか?
美味い酢飯に仕事の行き届いた美味い鮨ネタの味をしっかり堪能でき、最後に口内の温度で両者が完全に一致して一体化し、唸るような旨さの後に残るのは感動だけ。
新橋『久』の弟さんの力もあってか、今はビールはハートランドに、お店には白ワイン(アルザス)や赤ワイン(ピノ)も置かれていますが、あの弟さんのセンスでしたらきっとそのワイン達は合うのでしょうが、それらのワインを頼む気も起きない圧倒的な奥行きと余韻のある美しい握り鮨の「酸」。
今は亡き頑固爺様方が作られた昔ながらの古き良き30-40年物の極上ブルゴーニュ赤ワインじゃないと釣り合わないのが判るからです。
そんな今は亡き爺様方じゃなくても、一昨年に突然亡くなったプリューレ・ロックや妹と決別して別の場所でワインを作り始めたポンソの最上ランクの赤ワインあたりじゃないと釣り合わないのが判ります。
あーっ、そうだ、清水の御主人はプリューレ・ロックだ!
プリューレ・ロックの『クロゴワイヨット』と『クロドコルヴェ』と同じ"クラス感"のそんな酢飯(シャリ)。
そんな握り鮨。
いつまでも続く長い余韻を断ち切るために、ぬる燗で誤魔化すしかないわけです。
包丁捌きも握りも流れるように静かで美しいです。
この20年近い間、ミシュラン星と共に、周囲の鮨屋の世界的な展開や発展には、きっと当時は色々な想いがあったことでしょう。
紛いものの赤酢鮨屋が一丁前に江戸前気取って豪華な内装で跋扈(ばっこ)して世間の高評価を得ている様に辟易してやりきれないこともあったでしょう。
それらを乗り越えて自然体となったであろう御主人の「今」。
銀座『しみづ』の御主人の選択は決して間違いでも遠回りではなかったわけです。
現に、私のような人間が原点回帰して再認識しています。
そう、2022年、今の新橋『しみづ』はいよいよ無敵でしょう。
『あら輝』の御主人や銀座『さわ田』の御主人には申し訳ないですが、まもなく令和4年になろうとしている今、新橋『しみづ』の御主人の握る鮨が頭一つ二つ抜けてます。
現時点では断トツ。
だって銀座『さわ田』などにときどきある握り鮨を放り込んだ際の口の中での酢飯(シャリ)の違和感がないからです。
「江戸前鮨とは酢飯(シャリ)のことである」ことを改めて気付かされます。
やはり、江戸前鮨において「粋(いき)」という旨味は最後の調味料。
ミシュラン星や世界的評価を断って逃したモノの代わりに、新橋『しみづ』の御主人だけが手に入れた魔法の調味料。
この「粋(いき)」が随所の仕事に現れるからこそのこの美味しさです。
これだけの極上の握り鮨をこの価格で食べさせる「粋」、ミシュランを断り続け、ゼロから自分を積み上げ続ける「粋」、予約は総て1週間前の朝8時〜に限定するフェアネスな「粋」。どんなにお金を積まれても決してどの大金持ちの子飼いに成り下がらない、あくまで平等に眼の前の来店者達を扱う「粋」。
怒涛のあっという間の60分間と大量の感動の後を襲う虚脱感。。。
そのあと何にもやる気も食べる気もしません。
ふぅ、、、大人になって気づくことがあります。
良い苦労をしてきた人間は酸味や苦味に強く反応して、またそれを好む傾向があることを。逆にいつもちやほやされて甘やかされてきた人間はそういう味を苦手とする傾向が高いです。
もちろんご出身地などの色々なケースがあるんですが、往々にしてそういうことが多いです。
どちらが良いというわけではありません。
人間としての属性が違うだけ。
新橋『しみづ』は正直いって、20-40才代の男性がビシッと決めて女性とのデートに利用するようななそんなシチュエーションに相応しい場所じゃーないです。
ただ、ここは強調しておきたいのは、江戸前鮨というのはそもそもそういうもの。
パッと食べて次へ行く、そういう立ち位置だったわけです。
そして何よりも、都心の鮨屋で唯一15年近く前から銀座で唯一女性を弟子に引き受けていた親方こそ、新橋『しみづ』の御主人だということです。
ある意味どの鮨職人よりもフェミニストでしょう。
女性同士でも、香水つけずにちゃんと自然体で伺えば、しっかり優しく対応くださいます。純粋に握り鮨を堪能できます。清水氏はそういう御方です。
え?
『御主人が話しかけづらい』
『御主人が常連ばかり贔屓する』
何をいってるんでしょう?
これだけ最高レベルの高次元な握り鮨をこれだけお得にリーズナブルに提供頂いて、本来ならこっちが菓子折り一つでも持って頭下げて伺わないといけないのに、さらに何を求めるの?って感じです。
そもそも人生は不平等。
たまに来たような人間が昔から通ってくれてる方々と同じようなサービスを受けようとすること自体おかしいでしょ?
そして何よりも、
御主人の握る握り鮨が何よりも多くを何よりも『雄弁』に我々に語りかけてくれているじゃーないですか?
それらの言葉に耳を塞ぎ、さらに当たり障りのない会話をしたいなら銀座『さわ田』等に伺えば良いですし、ちやほやされたないなら、本来の江戸前の「酸」に抵抗があるのなら、地方の鮨屋か出来たばかりの40代オーナーの鮨屋や銀座『久兵衛』あたりいけば良いじゃーないですか。
きっとそういうことをお望みの方を世間の大半の人気なお鮨屋はとても気持ちよく持ち上げて下さいます。
でも、こうも思います。
普段から自分の承認欲求を満たされている人間にはそんなモノ必要ないよね?
そしてそもそも、それって「粋(いき)」じゃーないですよね?
今、世界がどんどん平均化してせせこましくなっている中で本物の「粋(いき)」を感じさせてくれる、勉強させてくれるお店や人がどんどんいなくなっています。
そんな中でとても希少で貴重なお店です。
食べログptでなら、味4.9ptでCP5.0ptというところ。
年内は予約一杯でしょうから、令和4年に極上の江戸前鮨を堪能したいのなら、新橋『しみづ』をまずは2-3回堪能しましょう。
慣れてきたら以下からその時々で選べばオッケーです。
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1.握りのみ
2.つまみ少なめ&握り
3.つまみ&握り
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事前に伝えれば、お昼から完全夜メニューも頂けます。
ふぅ、一気呵成に色々申し上げました。
とはいえ皆さんご安心下さい。
外でグルメ武者修行ばかりしている私もこれだけレビューで新橋『しみづ』を絶賛していても未だ「なんか以前も来たかな?」程度の初見扱いですから〜(ノ_<)。
しょーがないです、新橋『しみづ』の御主人の握り鮨がミシュラン三つ星レベルに美味いと気付くのには相応の時間がかかりますって!
20代30代前半じゃー無理ですって。
極上ワインをひと通り飲まないと無理ですって。
そこそこの失敗や成功を経験しないと無理ですって!
親方の清水氏も今でこそ丸くなりましたが、私が新社会人で銀座鮨デビューしたときは本当にギラギラして怖かったんですから汗!!
夜は当然その倍以上お高くなりますが、それでも伺う価値はあり。烏森神社の夜もいいんですよねー。
普段自分の持ち場で一生懸命頑張っていらっしゃるグルメンが1人で、もしくは鮨好きの友人知人と、お互いの会話も良いですが、眼の前の握り鮨を集中して堪能するために襟を正して伺いましょう。
大丈夫です、お店でた2軒目で色々お話しすればいーじゃないですか?
懐に余裕があれば銀座『シノワ』で赤のグラスワイン片手に、余裕がなければ上客しかいない第一ホテルのロビーでも良いですし、銀座三越地下にある3-4人しか座れないワイン屋でグラスワインで新橋『しみづ』の余韻をつまみに一杯やればいーじゃないですか。
どうしてもBarが良いというのであれば銀座『テンダー』があるじゃないですか。
いやー、新橋『しみづ』の御主人の握り鮨にはミシュラン「三つ星」が良く似合う。
いや、「三つ星」しか似合わない。
ミシュランスタッフ達がお弟子さん達(水天宮前『高柿』京都『まつもと』大阪『ほしやま』etc)をミシュラン一つ星で厚遇してご機嫌とるのも納得です。
" 本物の一流はお金ではなく人を遺す "とはよくいったもの。
あー、食後帰宅中の日比谷線(銀座-中目黒間)で一気にレビューしてしまいました!
明日は銀座『小笹寿し』か、久しぶりだなー。
さーて、今日は美味しいランチ食べてそのまま早上がりなのでこのまま帰宅して、新橋『しみづ』の余韻を肴に、プリューレ・ロックのそろそろ飲み頃になったであろう90年代の『クロゴワイヨット』と『クロドコルヴェ』でも飲もうっと。
もはやこの東京に片手位しか存在しない本物の江戸前鮨屋に乾杯です♬
1人の社会人として、男性として、心より尊敬申し上げます。
※予約は1週間前の午前8時〜からで10-30分で埋まります。
※新橋『小笹寿し』も昔ながらの江戸前で、尚且つ女性的な酢飯(シャリ)と癒し系の雰囲気でお勧めです。
※エチケットとしてお酒かノンアルを1-2杯注文しましょー。
※ 清水氏は今となってはめちゃくちゃ気さくな御方です。
※スマホいじるのは自由ですが、音は消しておきましょー
※カード使えますが、現金払いは尚喜ばれます。


